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東京高等裁判所 昭和34年(ネ)475号 判決 1960年9月30日

判決

東京都台東区浅草小島町二丁目二三番地の九

控訴人

水野善治

東京都中央区日本橋横山町十番地の一

控訴人

株式会社水野

右代表者代表取締役

水野善治

右両名訴訟代理人弁護士

大高三千助

露木滋

藤江忠二郎

東京都台東区浅草小島町一丁目二番地一五

被控訴人

高津弘治

右訴訟代理人弁護士

谷川八郎

右当事者間の当庁昭和三十四年(ネ)第四七五号建物収去土地明渡請求控訴事件につき当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原判決を取消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、第二審共被控訴人の負担とする。

事実

控訴人等訴訟代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、第二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人訴訟代理人は控訴棄却の判決並びに第一審判決に仮執行の宣言を附せられたい旨を申立てた。

当事者双方の事実上の陳述は、控訴人等訴訟代理人において「一、本件賃貸借の約定条項中被控訴人主張の増改築禁止の特約は借地法第十一条に反し無効である。――本件賃貸借は普通建物(非堅固)の所有を目的とするものである以上、賃借人が賃借地上に非堅固建物を所有するために、かかる建物を新築し、既存のかかる建物について増築、改築、大修繕をすることは賃借人の本来の機能に属し、これを制限する特約は借地法第十一条に該当する契約条件というべきであつて、借地法第七条の規定の存在もこの見解を支持する根拠にこそなれその妨げとなるものでない。即ち第七条による異議を述べないと同条所定の効果が発生するのであるが、異議を述べると同条所定の効果の発生を妨げるに止り、例えば非堅固建物の所有を目的とする賃貸借であるのに堅固なる建物を築造するというような賃借人の義務違背のない限り、賃貸人に解除権ないし築造禁止請求権を得させるものでないと解すべきである。二、被控訴人の賃貸借解除は権利の濫用である。――被控訴人は控訴人水野より金五十万円の礼金を受けとることとして期間を二十年とする本件賃貸借契約を承諾したものであるところ、その後わずか六月間の本件解除の意思表示当時までに被控訴人が本件土地を更地として自ら使用することを必要とする事情は生じていない。他方控訴人水野は高額な対価を支払つて建物所有権を取得し、被控訴人に対する礼金を負担して借地権を取得したものであるのに、若し本件解除が有効だとすれば、被控訴人の得るところは本来予期すべからざる不当な利益であるに反し、控訴人が失うところは当然正当に亭受すべき利益である。被控訴人の本件解除は控訴人等を害する目的を以て契約条項第六、第九条違反にかこつけてなさんとするものであつて明らかに権利の濫用である。三、賃料未払を理由とする解除の失当であること――(イ) 本件賃料の支払につき被控訴人が本件土地関係で収入のあることがその周囲の人に知れないようにするため被控訴人が控訴人水野方に取立にくることに特約がなされたもので、控訴人水野がこれに反して弁済の準備をしたことを通告したり、受領を催告したりするならば却つて控訴人の義務不履行となるわけである。本件賃料額は月額一万七百五十八円で控訴人善治としては問題とされる昭和三十一年三、四月分の賃料についても各月末に弁済の準備をしてその取立を待つていたものであつて履行遅滞の責はない。(ロ) 被控訴人が控訴人水野の賃料の延滞を理由とする解除は信義則に反する。即ち被控訴人は前記特約成立後最初の賃料期間である昭和三十年十二月は勿論、これにつづく昭和三十一年一、二月の賃料につき特約に従つて賃料受領のため控訴人方に出向いたので控訴人善治としては同年三月以後の賃料についても従前どおり取りにきてくれるものと信じていたところ、被控訴人の方では何等取立に行くことができない事情もないのに故意に取立に来らず、突如履行遅滞があるものとして本件解除に及ぶのは信義則に反し解除権は発生しない。なお、昭和三十一年五月十八日同年三月ないし五月分の賃料を供託するに当り事前に履行の提供をするも受領を拒絶せられること明確であつたので言語上の提供もしなかつた。四、予備的請求原因に対する答弁――(イ) 被控訴人の予備的請求原因に関する主張は故意または重大な過失により時機におくれて提出した攻撃方法であつてこれがため訴訟の完結を遅延せしめるものであるから却下を求める。(ロ) 右予備的請求原因によると昭和三十一年五月十五日の本件仮処分執行後における増改築を以て特約違反とするというにあるけれども、本件増改築禁止の特約の効力がないことは既に述べたとおりであると共に、仮処分執行後に本件建物に加えた変更は被控訴人の主張や原判決の認定のような大げさなものでない。もともと右仮処分執行当時本件建物の増改築工事は進行中であつたのを、被控訴人はこれを秘して単純な不動産の占有移転、現状変更禁止の仮処分としてこれを執行したものであつて、新材の部分すべてが仮処分執行後の増築変更工事ではない。事実仮処分執行後の変更部分は極僅かでその大部分は仮処分前に工事が済んでいたのが真相である。控訴人水野としては決して仮処分を無視して大々的な現状変更をしたわけでなく、仮処分の主文には工事禁止がうたわれていないことから、工事中の建物の恰好をつけるため応急工事をしたに過ぎない。」と述べ、

被控訴人訴訟代理人において、「(一) 本件公正証書第六条の特約について――(イ) 右特約は決して例文でなく被控訴人としては隣家新井の店舗との中間空地に増築する場合には一応善隣として新井にことわる必要のあつたこと、その他本件土地賃貸借契約は被控訴が訴外三浦に説得されて非常に不利に締結させられたので、将来増改築、新築の場合、殊に当時横山町一帯を全部鉄筋コンクリート防火建築地帯にするという話もあつたのでそのような新築の場合は更に地代の値上、権利金の追加支払をして貰う等の事情があつたため控訴人水野も納得してこれを承諾したものである。(ロ) 右約款は借地法第十一条に反し無効であるとの主張は法解釈として誤つている。借地法第十一条により制限を受けるのは同条に規定する契約条件に限るもので右特約はそのいずれにも該当しない。借地人が自由に増改築をなし得るとすれば建物が朽廃するということなく従つて借地権消滅の場合に建物なき場合は稀有となり事実上地主にとつては借地法の期間も有名無実となるであろう。即ち借地法第七条は朽廃による建物滅失の場合も当然予想しているのであつて自然朽廃を阻止するような増改築を認めないからといつて借地法で認められた原則としての更新請求権や買取請求権を殊更不利に陥らしめるものでない。(二)、権利濫用の抗弁について――前記(一)の(イ)で述べたような事情でこの特約をしておきながら控訴人水野においてこれを破り背信行為をしたため契約解除に及んだものであつて、その非は同控訴人にあり、決して権利の濫用となるものでない。(三)、賃料債務不履行による契約解除は有効である。――(イ) 賃料債務を取立債務に変更したことはない。尤も賃貸権利金が少額の月賦払であつたため便宜控訴人方に貰いに行つた序でに賃料を受取つたに過ぎない。(ロ) 賃料不払を理由とする解除は信義則に反するという主張は争う。(四)、予備的請求原因、――仮りに昭和三十一年五月九日なされた契約解除の意思表示が何等かの理由により効力を生じないとすれば、被控訴人は控訴人水野に対し昭和三十五年八月五日の当審最終口頭弁論期日において、左記無断増改築工事を原因として本件特約に基ずき契約解除の意思表示をする。即ち昭和三十一年五月十五日本件土地建物につき占有移転並びに現状変更禁止の仮処分が執行されたが、その後同年十二月頃までの間に控訴人水野は本件建物につき別紙内容の増改築工事をしたものである。」と述べた外は原判決事実摘示と同一であるから、これをここに引用する。

証拠(省略)

理由

一、昭和三十年十一月十五日被控訴人がその所有にかかる東京都中央区日本橋横山町十番地の一宅地三十五坪八合六勺(以下本件土地という)を木造建物所有の目的を以て期間同日より二十年、賃料一ケ月金一万七百五十八円毎月末の約で控訴人水野に賃貸したこと、当時右地上には控訴人が訴外高津ハナ(被控訴人の養母)から買受けた被控訴人主張の建物(以下本件建物という)を所有していたこと、控訴人水野は昭和三十一年二月上旬頃被控訴人に無断で本件建物と隣家新井某との間に存した空地中本件賃貸地内にある右建物に接して一部増築工事をしたのを始め、本件建物の裏手にあつた丸太作りのバラックにも手を入れその増築坪数は六坪三合五勺に及んだこと、被控訴人は同年五月九日控訴人水野に対し右無断増改築を以て後記特約に違反するものとして本件土地の賃貸借契約を解除する旨の意思表示をなしたことは当事者間に争がない。

二、よつて先ず被控訴人主張の特約の有無並びにその効力について判断する。

(イ)(特約の成否)

成立に争のない甲第三号証(乙第一号証も同一)の公正証書記載の約款第六条及び第九条によれば「賃借地の現状を変更し建物の増築改築新築大修理を行うときは賃借人は事前にその計画を明示して賃貸人の承諾を得ること、右条項に違背した事実があるときは賃貸人は将来に向つて本契約を解除することができる」旨の記載があるところ、控訴人等は右は例文であつて当事者間ではかかる特約の合意は成立していなかつた旨主張するのであるが、この点に関する当裁判所の判断は原判決理由(中略)に説示するところと同一に帰するから、これをここに引用する。

(ロ)(特約の効力)

一般に建物の所有を目的とする借地契約において当事者は土地の用法に関し建物の種類構造(借地法第二条、第三条)を定め得るのであつてこれによつて賃貸借の法定期間も異なるのであるから、若し地上建物の増改築の種類構造が借地契約に定められたそれと異なる場合、例えば非堅固な建物の所有を目的とする土地の賃貸借において増改築されたものが堅固の建物であるときは用法違背となり、賃貸人はこれを理由に契約を解除し得ることは当然である。従つてかかる意味の契約違反を未然に防止するため賃貸人が予めこの種の無断増改築を禁止し、若しこれに違反すれば賃貸借契約を解除し得る旨の特約を結ばしめるもその有効であることは敢えて言を俟たないであろう。ところで本件賃貸借は木造建物(非堅固建物)の所有を目的とするものであり、被控訴人が前示特約違反なりとして主張する建物の一部増改築は堅固な建物のそれでないことはその主張自体に徴して明らかであるから、問題は前示にいわゆる用法違背に該らない範囲における建物の無断増改築をも禁止する特約の効力如何に繋る。思うに借地法にいう借地権者は賃借期間の存続中は契約で定められた目的の範囲内で権利の内容たる建物所有のためにする使用収益の権能は完全亭受を許さるべきものであつて、地上建物の修改築につき借地法の定めた堅固非堅固の種類構造の外例えば同じく非堅固の建物の所有を目的とする借地の場合でも住宅用建物の敷地と工場建物のそれの如く土地の使用状況等土地所有者の経済的利益に重大な影響を及ぼす場合は格別かかる程度に至らぬ地上建物の修改築についてまでこれを制限し違反の場合直ちに契約を解除し得る旨の特約は借地人に不利なる契約条件として同法第十一条に照らし無効と解すべきである。或は借地法第七条により残存期間を超えて存続すべき建物の築造につき賃貸人において異議を述べ得ることが許されている関係上かかる特約にも別段の効力を認むべしとの疑義を生ずる余地があるかもしれない。しかし同条の異議は非堅固建物所有のための借地権者が用法違背の堅固の建物を築造した場合は格別、用法違背とならない建物の築造の場合にはその異議によつては同条の定める期間の延長を阻止する効力を生ずるに止り、借地権は残存期間中依然存続し借地権者はその期間内用法に従う使用収益権の行使を妨げられることなく、賃貸人は工事を禁止する権利を有しないものと解すべく、ただこの異議を述べたことにより存続期間満了の際における更新拒絶ないし地上建物買取請求権の行使の点につき考慮せらるべきものであろう。この点に関し「借地上の建物が滅失し借地権者が新たに非堅固の建物を築造するにあたり、存続期間満了の際における借地の返還を確保する目的を以て、残存期間を超えて存続する建物を、築造しない旨借地権者をして特約させた場合、右特約は借地法第十一条により無効である、」と判示した最高裁判所第一小法廷昭和三十三年一月二十三日言渡判決(判例集第十二巻第一号七七頁参照)は参考とするに足る。以上の見解に反する大審院判決あるも左祖しない。

これを本件につきみるに(証拠省略)控訴人水野の本件地上にある前示建物に対する一部の増改築工事は敷地土地の賃借人である同控訴人の生活上営業上の必要にもとずきなされた一部拡張工事であつて、たとえそれが建物の維持保存の程度を超えたものであつてもこれがため従前の住居兼店舗用建物所有のためにする土地の用法そのものまでに重大な変更を加うる程度のものでないこと、並びに後に認定する如く前示賃貸借成立当時本件地上に存在していた建物は相当古いものでこれが維持保存のためにも早晩修築を要すべきことが予想せられていたが、もともと借地権設定の対価等に不満を抱いていた被控訴人はかかる場合に備えて前示増改築禁止の特約を保持しておき新たな権利金の取得の便益に供せんとする意図に出でたものであることを認め得べく、これら事実をも勘案し上来説示し来つたところに照らして考察するに若し前示特約が右認定の如き一部増改築の無断施行をも禁止する趣旨をも含むとすればこの限度で無効と解する外なく、従つてこれを前提とする被控訴人の本件解除は失当である。

三、賃料の不払を理由とする解除について

次に前示昭和三十一年五月九日になされた契約解除の通告には同年三月分及び四月分の賃料の不払をもその理由されているのでこの点につき審按する。

(証拠省略)を総合すると次の事実を認めることができる。即ち(一) 本件建物は元被控訴人の養母訴外高津ハナの所有でその店舗部分を昭和二十三年末頃より同家に永年奉公したことのある控訴人水野善治が賃借してきたものであり、一方その敷地たる本件土地は被控訴人においてその養父高津昌三から贈与を受けてその所有権を取得したものであるところ、昭和二十九年十一月右昌三死亡後同三十年十月十二日頃多年同家と懇意の間柄であつた三浦政次郎のあつせんにより控訴人水野において右ハナから本件建物をその場所的権利をその場所的権利を含めた代金七百万円で買受けることとなつたが、被控訴人としては養毎ハナとは折合悪く且つ当時の敷地の借地権の価格とも対比して右売買には強く反対したが、前示三浦政次郎等の説得により水野より礼金五十万円を貰うことで本件土地の賃貸を承諾し昭和三十年十一月十五日甲第三号証の賃貸借公正証書が作成され、右公正証書によると賃料については一ケ月金一万七百五十八円毎月末持参払とする旨の記載があること、(二) ところで右公正証書作成後その日に控訴人水野及び被控訴人は右三浦と共に同人方に立寄り前記五十万円の内金二十万円と昭和三十年十月の半月分、十一月分の土地賃料の支払を済ませ、右礼金の残額三十万円については五万円の月賦とすることに話合ができたが、その際被控訴人は控訴人水野に対し月賦で貰つていることを家人の者に知られても困る。月賦金は毎月末に自分の方から貰いに行くから、土地賃料の方もそのときに受取ることにする旨を告げ、事実同年十二月分、翌三十一年一、二月分も各月末ないし翌月初頃前記月賦金と共に控訴人水野方に赴いてその支払を受けてきたこと、(三) ところが同年三月頃から前示一部増改築のことから、両者の間が不和となるに及び被控訴人からは何の通告もなく右月賦金や土地賃料を取りに来ないようになり、控訴人水野としては、少くとも賃料については少額のことではあり、従来のように取りにきてくれれば何時でも支払う準備を整えていたのにそのままとなり、遂に同年三月、及び四月の二ケ月分についてその支払期を徒過したこと、(四)そして前示建物の一部増改築工事のことに関し憤激していた被控訴人は賃料不払の場合にも契約を解除することができるという解除権留保の特約あるを奇貸とし改めて右賃料を持参してくれとの一片の通告をなすこともせず同年五月九日前示解除に際して突如右賃料の不払をもその解除の理由として附加したという諸般の経過事実を認めることができる。(中略)そして以上認定の事実に照らして考うるに本件賃料の支払方法に関しては、控訴人等主張のような取立債務に変更せられたものとまでは解し得られないにしても、前示認定のような経過事実の下における解除権の行使は信義則に反するものというべく解除の効力を認めることはできない。

四、予備的請求原因について

控訴人等は被控訴人主張の予備的請求原因は時機におくれた攻撃方法であるとしてこれが却下を求めるけれども、右主張のため更に新たな証拠調を要するわけでなく、従前の証拠調の結果によつて判断し得る事項であつてこれがため著しく訴訟の完結を遅延せしめるものでないから、右異議は採用しない。ところで(証拠省略)本件土地建物につき昭和三十一年五月十五日被控訴人主張のような占有移転禁止並びに現状不変更の仮処分が執行されたが、その頃には既に前示の如く地上建物の一部増改築工事が進行中であつたため、仮処分債務者である水野の側でもその措置に窮し、応急的工事なりとの名の下になおも工事を続行し、当初の工事着手の時から同年十二月頃までの間における増改築工事の内容を全体としてみれば略被控訴人主張の別紙(三)、(四)記載のような内容のものであつたこと、そして右は現状を変更するものとして執行吏から退去の強制処分を受けたことを認め得るのであるが、右増改築が仮処分命令にいう現状変更に該当するかどうかということと、前示特約違反の問題とは自ら別個の問題である。即ち右増改築による変更の程度はもとより右仮処分にいう現状変更に該当すること疑を容れずそのこと事体は命令違反行為として使用禁止等の執行処分を受けることは当然の事理に属すると共に、一方前示仮処分執行後の増改築によつて前示第一項の解除原因とされた昭和三十一年二、三月頃のそれを更に拡大倍加せしめたことも事実である。しかしこれとても旧建物を全部取払つて他の用法のための新築家屋を建設したわけでなく、従前の店舗兼住宅用の本件建物が手狭であるので営業上の心要にもとずきなされた増改築であつて、よしやそれが建物の維持保存の程度を超えたものであつても前記二、の(ロ)において説示したところと同一理由により右予備的請求も理由がない。

五、結論

してみると控訴人水野が本件地上に本件建物を所有し右土地を占有しているのは賃借権にもとずく適法な占有というべく、同控訴人がその代表者たる控訴人株式会社水野が右地上にある本件建物を占有してひいてその敷地たる本件土地を占有していることは当事者間争はないが、右控訴会社の建物占有は控訴人水野の前示権原に由来するものであつてその適法であることまた論を俟たない。

よつて被控訴人の控訴人等に対する本訴請求をすべて失当として棄却すべきものであつて、以上と反対の見解に出てた原判決は不当であるから、民事訴訟法第三百八十六条に則り原判決を取消し、訴訟費用の負担につき同法第九十六条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第一民事部

裁判長判事 柳川昌勝

判事 坂本謁夫

判事 中村匡三

別紙

被控訴人が引用する昭和三十二年四月二十三日附準備書面三の(三)ないし(五)摘示の増改築工事の内容(記録第一六四丁裏)

(三) 右仮処分執行当時は、表より奥へ四間半迄は間口二間半、それより奥へ六間の部分は間口三間であつて、二階は右表より奥へ四間半迄の部分にのみ存在し、表側に於て一階より三尺引込み、奥行四間、間口二間半であつたが、

右表より奥へ四間半迄の部分の間口二間半であつたのをそれを奥の部分と同様間口三間にした。

二階は表より奥へ四間半の個所迄であつたのを、表より奥へ四間半の個所より、更に奥へ五間半迄、間口三間で二階を新設した。

(四) 仮処分執行当時本件建物の奥の部分間口三間奥行六間の平家部分であつたのを、その後最奥の二間を除去し、四間の部分を前記の如く二階建に改築し、奥の二間の部分を一間半(間口は三間)とし、その部分は更に中三階に改築した。

(五) 前記の如く、バラック建丸太造を本建築とし、平家バラックを二階建又は中三階とし、又別棟を一棟にしたような大改築をしたのである。

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